難病・希少血液疾患センター

センター長 井上靖之医師
センター長 井上靖之医師
副センター長 小杉成樹医師

この度、当院血液内科内に難病・希少血液疾患センターを設置いたしました。

対照疾患

    • 再生不良性貧血
    • 発作性夜間ヘモグロビン尿症
    • 特発性血小板減少性紫斑病
  • 骨髄増殖性腫瘍(骨髄線維症、真性多血症、本態性血小板血症) 慢性骨髄性白血病
  • 慢性リンパ性白血病
  • リンパ形質細胞性リンパ腫

など
(血友病など遺伝性凝固異常症は除く)

これらの疾患は完全な治療法が確立されておらず、またそれ故、分子標的療薬、特異的抗体療法などの新規薬剤の導入が著しい領域でもあります。
われわれは、これらの疾患を効率よく治療するため集約し、臨床データを集め、成績を報告いたしてまいります。
上記の疾患の多くは無症状の内に健康診断、偶然の採血で発見されます。 白血球数、血小板数の異常、貧血、多血を認めましたら是非ご紹介ください。


臨床試験実施計画書  特発性血小板減少性紫斑病に対するステロイド治療の早期離脱の有用性の検討

【はじめに】
 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のファーストライン治療としてのステロイド投与は、我が国のガイドラインでは、プレドニゾロン(PSL)0.5~1 mg/kg/日を 2~4 週間の経口内服を行い、その後,血小 板数の増加の有無にかかわらず,8~12 週かけて PSL 10 mg/日以下にまで漸減する。寛解に到達しない症例については血小板数 3 万/μl 以上を維持できる状態に,PSL 10 mg/日以下の維持量で経過を観察する、とされている。一方、アメリカのガイドラインでは、6週以内にPSLを漸減中止することが推奨されている。ステロイドは副作用も多く、中等量(20-40mg/body)以上のPSL投与では、1-2カ月で無菌性骨壊死、緑内障など、長期継続する副作用の出現の可能性が報告 )されている。最近、新規のセカンドライン治療薬が上梓され、難治性ITPの治療選択枝が増えてきた。
 我々は、ITPステロイド治療による副作用を軽減すべく、本邦におけるアメリカのガイドラインに準じた投与法の有用性を検討する。

【対象】
(1) 選択基準: 以下の基準を全て満たすもの
1) 横浜鶴ヶ峰病院にて診療を行ったプレドニゾロン適応の患者
2) 文書による同意が得られたもの
(2) 除外基準; 以下の基準のいずれかに該当するもの
1) 同意が得られない、または同意を撤回した場合
2) その他、試験担当医師が本試験対象として不適切と判断した場合

【試験方法】
1) 試験デザイン: オープン試験
2) プレドニンの副作用予防(感染、胃潰瘍など)は
ガイドライン等に従い適切に行う。            
3) PSL0.5mg~1mg/Kgで治療開始、2週間投与後より漸減、6週間での終了をめざす。
投与開始2週にても血小板数>5万/μlとならない場合、セカンドライン治療薬、治療法を順次検討する。PSL以外の治療薬、治療法に効果が認められない場合、血小板数 3 万/μl 以上を維持できる状態に,6週以降もPSL 10 mg/日以下の維持量で経過を観察する。

【検査項目】
通常診療で施行する、血算、生化学検査など。
【検査方法とスケジュール】

【評価項目および評価方法】
 主要評価項目Stable platelet responseの達成割合
Stable platelet responseは、投与14~24週までの6回の来院のうち4回以上で血小板数が50,000/μL以上と定義し、達成した患者をレスポンダーとした。
 治療開始6週後のPSL投与中止割合。
 副次評価項目
• 第Ⅰ期におけるOverall response(投与2~12週までの6回の測定のうち、1回以上で血小板数が50,000/μL以上と定義)の達成割合
• 血小板数の要約統計量
• 血小板数の個別推移
• 血小板数の達成割合
• 血小板数の奏効率 等
 安全性評価項目:有害事象、治験薬との関連性及び副作用の発現状況

【中止基準】下記を認めた場合は試験を中止する。
・治療中に重大な有害事象が生じた場合
・その他の理由で担当医が試験の継続が困難と判断した場合
・患者より試験中止の希望があった場合

【目標例数】
15例

【研究期間】
承認後~目標症例数達成まで。

【同意取得方法】
同意説明文書を患者に渡し、下記の内容につき文書および口頭による十分な説明を行い、患者の自由意思による同意を文書で得る。患者本人の意識がないなどで同意が得られない場合は患者家族等を代諾者とし同意を取得する。
1) 本試験の目的および方法
2) 予想される臨床効果および副作用
3) 参加に同意しない場合であっても不利益を受けないこと
4) 同意後でも随時撤回できること
5) その他被験者人権擁護に必要な事項

【有害事象発生時の取り扱い】
1) 有害事象発生時の被験者への対応
試験責任(分担)医師は、有害事象を認めたときは、直ちに適切な処置を行うとともに、カルテに齟齬なく記載する。迅速に適切な医療を保険適応内で行い対応する。
2) 重篤な有害事象の報告
重篤な有害事象の定義(1.死亡または死亡につながるおそれ、2.入院期間の延長、3.障害または障害につながるおそれ、4.後世代または先天性の疾病または異常)
試験期間中の全ての重篤な有害事象、試験終了後に本試験との関連性が疑われる重篤な有害事象について学長、生命倫理委員会委員長及び、臨床試験部会に報告する。

【健康被害発生時の補償】
この臨床研究では、すでに厚生労働省より認められた治療薬において承認されている効能・効果および用法・用量の範囲内で実施されているため、この研究に関する健康被害に対しての補償と治療は、通常の診療時に発生した健康被害や医療事故と同じ扱いとする。

【患者の費用負担】
本研究は通常の臨床範囲内で実施されるため、医療保険制度に沿った患者負担とする。試験に参加することで被験者の費用負担が増えるものではなく、被験者の経済的利益が得られることもない。

【被験者の人権への配慮】
研究責任者が患者データを暗号化して、管理する。研究実施に係る生データ類および同意書等を扱う際は、患者の秘密保護に十分に配慮する。研究の結果を公表する際は、患者の情報を含まないようにする。研究の目的以外に、研究で得られた患者のデータを使用しない。

【健康被害に係わる補償および保険への加入】
賠償保険への加入はない。保険診療内で適切な医療を行う。

【ヘルシンキ宣言への対応】
ヘルシンキ宣言(2008年改訂)「臨床研究に関する倫理指針」「疫学研究に関する倫理指針」「ニュールンベルグ綱領」「個人情報保護法」を遵守して実施する。

【記録の保存】
試験責任医師は、試験等の実施に係わる必須文書(申請書類の控え、病院長からの通知文書、各種申請書・報告書の控え、被検者識別コードリスト、同意書など)を保存し研究期間終了後、少なくとも5年間は保存する。また、記録保存場所は内科学(血液・)医局内とし、検査結果を含め院外への持ち出しはしない。記録の保存責任者は、研究責任医師とする。
【試験の終了中止】
1) 試験の終了時は、試験責任医師は速やかに試験終了報告を病院長に提出する。
2) 試験の中止、中断に関して、試験責任医師は以下の事項に該当する場合に試験実施継続の可否を検討する。
① 使用薬の品質、安全性、有効性に関する重大な情報が得られたとき。
② 臨床試験部会により、実施計画などの変更の指示があり、これを受け入れることが困難と判断されたとき。
③ 臨床試験部会より中止の勧告あるいは指示があった場合には試験を中止する。
④ 試験の中止あるいは中断を決定した時には、速やかに病院長にその理由とともに文書で報告する。

【研究施設】
横浜鶴ヶ峰院 血液内科
難病・希少血液疾患センター

【研究責任医師・担当医師】
責任医師:井上靖之(横浜鶴ヶ峰病院 血液内科 難病・希少血液疾患センター)

個人情報管理者: 小杉成樹(横浜鶴ヶ峰病院 血液内科 難病・希少血液疾患センター)

2024年度の診療実績

再生不良性貧血
22名
発作性夜間ヘモグロビン尿症
3名
赤芽球癆
2名
特発性血小板減少性紫斑病
19名
寒冷凝集素症
1名
エバンス症候群
1名
原発性骨髄線維症
1名
真性多血症
21名
本態性血小板血症
20名
慢性骨髄性白血病
10名
慢性リンパ性白血病
1名
リンパ形質細胞性リンパ腫
1名